五月 課題曲

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 通常吹奏楽コンクールのA組に参加する団体が演奏しなければいけない課題曲というものは、五曲ほどの候補から各団体が選ぶ。そして大学・社会人向けの一曲以外はすべてマーチ、つまり行進曲である。  行進曲にはいくつかのパターン化された特徴がある。なんといっても冒頭や目立つ転換のときに金管楽器が華やかに奏でる「ファンファーレ」は見ものである。  次になんといってもマーチは行進させなければいけないのだから、確実でぶれない表拍(指揮棒のカウントと基本的に同じリズムを出す)と軽快で粒の揃った裏拍(表拍の合いの手のようなもの)の掛け合いは外せない。  裏拍の深みを語りだしたら止まらないほど裏拍はマーチの色を決める。表拍がキャンバスなら裏拍は背景色だ。  だが、アマチュアバンドにはよく「メロディ以外は脇役」といった風潮がある。  刈山中学校吹奏楽部も、その壁に直面していた。
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