三月 来訪

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「ええ、義務よ。貴女には貴女の音で表現する義務があるわ」  そう言い切るや守山はしっかりとうなずいて見せた。その水川への期待を体現するような仕草に、ある部員は安堵し、ある部員はやはり経験者は桁が違うのだ、と孤独感を深めた。  その後は順調に自己紹介が続き、パーカッション、通称パーカスのメンバーに順が回ってきた。  パーカスはこの部で唯一と言っていい、パートリーダーの指示により全員がやる気をもって練習をしているパートだった。実は、多数の部員が雑談に耽るなか、パーカスだけは楽譜を付き合わせて議論をしていたのだ。 「パーカスの自己紹介は自分の担当楽器で今の心境を表現しながら行います」  パーカスのパートリーダーの宣言の元、メンバーはスネアドラム、バスドラム、ウッドベース、マリンバで簡単なフレーズやリズムを披露した。  そのフレーズやリズムのセンスは守山にとってよくわからないものだったが、自己表現としての演奏の力を高める訓練としては悪くない、と思った。  そしてドラムセットに座っている、吹奏楽部には珍しい男子部員がドラムを叩いた。 「……!」  守山は驚いた。  細身で気弱そうな見た目から想像も出来ない、力強いサウンド。バスドラムを効果的に連打した足からグルーヴを作り出す表現力。 (この子はバンドでも組んでいるのかしら) 「七尾駿、二年です」  この部には、鍛えようによっては化けそうな逸材もいる。守山は俄然やる気が体を満たすのを感じた。 「さあ、これから筋トレを行いますよ!」  ドン引きな部員たちの表情を横目に、守山は肩を回した。
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