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翌朝、だらだらと登校する二人を辻立ちの守山が見咎める。
「ちょっとそこの二人! こっちに来なさい」
二人は守山を見るや、見るからに嫌そうな、苦手な虫を見るような顔をした。
「なんすかぁ、センセー」
「あたしたち、普通に登校してるだけなんですけど」
不機嫌な美花にかぶせるように佐織が守山に押し寄る。
「……普通、と言ったわね」
「うん」
「それが?」
「貴女、この髪色が普通だって言うの?」
守山は周囲の生徒や教師が眉をひそめて思わず振り返るほどの、甲高く、裏返った、まるでこの世の終わりを嘆くかのような怒声を放った。
「なによセンセー? 皆困ってんじゃん。謝んなよ」
「なんですって?」
火に油を注がれた形になった守山は顔を真っ赤にさせたまま怒声を吐き続け、男の教師になだめられながら校舎の端の、体育館に続く通路に誘導され、一瞬固まった生徒たちも残された教師たちにより沈静化され登校した。
その生徒の群れのなかに二人は紛れ込み、まるで被害者と言わんばかりに目を細めながら校舎の中に入り、土足から室内履きに履き替えた。
そんな二人を、生活指導部部長の初老の教師が手招きする。
二人はためらったのち、柔らかい笑みを浮かべる教師に吸い寄せられるように、ある部屋に入った。その姿を、他の生徒がこう噂する。
「あーあ、あの二人とうとう影山の殺人スマイルに掛かったー」
「あれからたっぷり搾られんだよねー」
「こわーい。でも、自業自得だよね」
最後の言葉に、恐る恐るではあるがはっきりと、周囲の生徒全員がうなずいてみせた。
「迷惑、だもんな」
早く教室に向かえと促す若い教師の出現で、彼らは蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの教室に走った。
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