side 宮本茜

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
中に入り、女性に通されたのはリビングのようだ。 そしてそこには、ソファーに座っている男性が1人いた。 その人物は立ち上がり、こちらを向いた。 その人は朝比奈君と似ているけど、確かに違っていた。 ということは、この人達が朝比奈君の。 「さて、先にこちらが自己紹介をしよう。  私は朝比奈隆行。  宏隆の父だ。  そして、彼女は朝比奈藍。  私の妻で、宏隆の母だよ。」 その話し方に、少し朝比奈君の姿がかぶった。 この人が彼の父親。 ただ、それに比べて藍という母親の方は・・ 「宏隆の学校のお友達が訪ねて来るなんて初めてだわ。  そうだ、お茶を入れてくるわね。」 おっとりとしているというか、のんびりしているというか。 少し毒気を抜かれてしまう。 「さて、まずは名前を教えてもらってもいいかな?」 隆行さんに促されて、私達も名前を名乗った。 「ふむ、本町君、宮本さん、暮崎さんだね。  ふむふむ・・」 隆行さんは本町君を見ていた。 その目は真剣で、何か見透かされそうだった。 私を見ているわけではないけれど、少し目を逸らしてしまう。 「君が本町君か。  宏隆から話を聞いたことはある。  優秀な生徒会長がいると。」 「あ、いえ、そんな・・」 その言葉に本町君は下を向いてしまう。 確かに、あの場において、あまりに無力だった。 私もそうだった。 ただ、その無力であったことから目を背けるように、視線から逃げてしまった。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!