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中に入り、女性に通されたのはリビングのようだ。
そしてそこには、ソファーに座っている男性が1人いた。
その人物は立ち上がり、こちらを向いた。
その人は朝比奈君と似ているけど、確かに違っていた。
ということは、この人達が朝比奈君の。
「さて、先にこちらが自己紹介をしよう。
私は朝比奈隆行。
宏隆の父だ。
そして、彼女は朝比奈藍。
私の妻で、宏隆の母だよ。」
その話し方に、少し朝比奈君の姿がかぶった。
この人が彼の父親。
ただ、それに比べて藍という母親の方は・・
「宏隆の学校のお友達が訪ねて来るなんて初めてだわ。
そうだ、お茶を入れてくるわね。」
おっとりとしているというか、のんびりしているというか。
少し毒気を抜かれてしまう。
「さて、まずは名前を教えてもらってもいいかな?」
隆行さんに促されて、私達も名前を名乗った。
「ふむ、本町君、宮本さん、暮崎さんだね。
ふむふむ・・」
隆行さんは本町君を見ていた。
その目は真剣で、何か見透かされそうだった。
私を見ているわけではないけれど、少し目を逸らしてしまう。
「君が本町君か。
宏隆から話を聞いたことはある。
優秀な生徒会長がいると。」
「あ、いえ、そんな・・」
その言葉に本町君は下を向いてしまう。
確かに、あの場において、あまりに無力だった。
私もそうだった。
ただ、その無力であったことから目を背けるように、視線から逃げてしまった。
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