その店は

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 駅前には、見知らぬ女子高生がいるって話を聞いたことはありますか。  それが自分です。  自分は擬態をするのが非常に得意です。  けれども、それに意味など何もありません。  好きなものもそれ以外に熱中することも何もありません。    そんな自分ですが、最近、ある習慣が付きました。  バス停前の喫茶店。  ごく普通に見えるその店に足を運ぶこと。  中に入ると、昔は格闘家の友達のような店主が近づいてきます。  店主は擬態どころか、すべての嗜好をオープンにした状態で、こう告げました。 「ねえ、やっぱりデータ売るき無いかな」と。  最近はもっぱらそればかり聞いてくるのです。  それを上手くかわしてコーヒーだけ頂戴していくのが自分の日課になりました。    
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