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「だって君、男子高校生だろ」
何年ぶりだろう。ひと目で気が付かれたのは。
もちろん、バレないつもりだった。自分の擬態は完璧だと思っていた。
どこからどう見ても、女子高生に見える格好の自分が、何故。
「入ってきた時は、女子だと思ったけどね。ふふ、僕の男子高校生センサーはあなどったらいけないよ」
「さすがですね。変態は」
「君だって、変態だよ。何も男子高校生の店に入ってくることないじゃないか」
「こっちだって只の喫茶店だと思って入ったんですよ。なのに、変な話ばかり聞かされるから」
「さすがに可哀想だと思ったからコーヒー出したんじゃないか」
あ、あれは店主なりのサービスだったのか。
「うちは男子高校生には売らないんだ。あくまで男子高校生を追い求める飽くなき探究心の店だから。本物には用は無いんだ」
「ひどいいいようですね」
「もちろんデータを売るって話なら別だよ。今なら高値で買い取るよ」
「嫌ですよ。自分はそこまでの人間ではありません」
そんな価値は自分にはない。こんな変な自分は、役には立たない。
「なら、価値が出てきたらまたここにおいで」
なんて優しい言葉をかけた後、店主は小さくつぶやいた。
「合法男子高校生」
「心の声はしまってほしいんですけどね」
怖さが余計増した。
「はっ……僕、何か言ったかい?」
なんて店主はとぼけた。
そろそろ帰りますと言ったら、あのガタイのいい店主は手を振った。
「またね」
なんて言った。
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