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「一年毎に新しい敵が現れるからな。人々の心の安寧のため、我々のような秘密組織も必要なのだよ。都内だけで系列店が他に二店舗ある」
頭が痛くなってきた。
僕がこめかみを抑えているとモニターからひときわ大きな爆音が轟いて、そうこうしているうちに例のヒーローが帰還してきた。おそらくは必殺技でもぶっ放してとどめを刺したのだろう。先輩は赤い衣装をまだ脱がず、余韻に浸るように言った。
「どうだ、カッコいいだろう。ストレス解消に最適なんだぞ」
「はあ」
ご満悦の先輩に、僕は疲れた返事しかできなかった。他にどうしろというのか、この状況。
とにかくこれでイベント終了かと、僕は胸をなで下ろした。しかし再び耳をつんざく警報音が鳴り響き、今度はご丁寧に照明まで赤くなる。モニターを見ると、そこには先ほど倒された怪物の巨大化した姿がそこにあった。
「何ィ!? 巨大化だと!!」
その光景にまともにたじろいだのはヒーローと化した当の先輩である。僕としては割とお決まりのパターンのように思えたが、どうもそうではないらしい。
「おっと……相手さんがちょっとムキになったようだ」
「クール気取ってる場合じゃなくて。どうするんですかこの状況!」
あくまでも冷静なマスターに、僕は思わず詰め寄った。正直人生最後の日がこんなんだと、死んでも死にきれない。
「落ち着きたまえ。あくまでこの戦いはショーだ、普通なら確かに決着していた。しかしこういった事例がないわけではない。向こうが勢い余って『地球滅亡させちゃおっかな~』みたいなムードになる場合もある」
あるのか。しかもそんな軽いノリで。
「そんな時のためのプロフェッショナルとして、我々がいるのだ」
「プロフェッショナル……?」
焦燥に駆られる僕と先輩に、マスターが余裕と謎の携帯型アイテムをちらつかせる。そして、次の瞬間。
「チェンジ・マスターブラック!!!」
変身した。マスターが。目の前で。
高らかな叫びとともに謎アイテムを掲げたマスターは、瞬時に黒いヒーローへと姿を変えていた。ちょうど先輩の着たスーツとヘルメットを黒色にした感じだが、デザインがより洗練されている。印象を一言でいえば、マスターのものの方が強そうだ。
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