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何気なく試着室の中に入ると、後ろから兄も躊躇なく入ってくる。
「うわっ!兄ちゃんも入るの?」
「オヤジがお前の衣装を見に来いって云ってたから。俺に良し悪しなんてわからないのに」
「見にって試着室じゃないでしょ。着終わって外に出てからじゃねぇの?」
「そうなのか?」
こういうところ、本当に天然なんだから・・・・。アンタが入ると恭介や真一もついてくる。
大勢で着替えを見られてるなんて、ストリップじゃあるまいし気恥ずかしいじゃないか。
全員男だけだとしても、そこは遠慮してもらいたい。
「着替えみられてるのって、正直恥ずかしいし・・・・」
「恥ずかしいのか?家じゃ普通に着替えてるのに」
「家じゃないでしょ、ここ。それに恭介や真一までいるし」
「そうですね。すいません」
恭助は飄々と答えて遠慮する様子もない。
「俺たちの事は気にしなくていい、他にもスタッフがいるんだから同じだろう。待たせてもらう」
そう云いながら、部屋の片隅の長椅子に腰を掛けた。
居座るつもりだ・・・・これ以上何を言っても無駄だろう。
「では始めますか」
K/Yカンパニーのスタッフがマネキンが羽織っている衣装を丁寧に脱がせ始める。
理玖は同じように自分の着ていたパーカーやシャツを脱ぎ始めた。それをじっと見つめる桂斗の目が、やけに突き刺さっていた気持ちさえした。
「あの・・・・なに?」
「お前、また筋肉を大きくしたな」
「そう?別にメニュー多くしているわけじゃないんだ。ただ夜中になっても舞にしかかさないようにはしている。せっかくこの衣装合わせで採寸したし、急に太ったりしたら迷惑かかるでしょ」
「お前は太る体質じゃないだろ」
「太らなくてもすぐたるむから。服に自分を合わせるのは、職業上癖になっているかな」
「そうか。モデルってのも大変なんだな」
「あくまでも服に合わせるのが仕事」
「チャラいだけで何も考えないやつらだと思っていた」
「いるよねぇ、そう云う認識もつ人。確かにそう云うやつもいるけど、そんな奴は消えてくと思うよ。プロ意識もってないと甘い蜜は向こうから寄って来るから、すぐにヤク中とか俺らみたいな人の側に堕ちてくる」
「芸能人だもんな、確かに元モデルとかよく見かける」
「すげぇな、白のタキシード」
「お前しか着られないな」
桂斗が溜息をついた。
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