今宵の月は・・・・

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「こりゃ、もうちょっと絞らないとダメだな」 「どうして?似合っているぞ」 「白は膨張して見えるんだ。下手に筋肉作るとデブに見えるだけだし」 「そうなのか」 「ズボンもタックで腰がデカく見える。こっちはシェイプだな」 「・・・・・・大変だな。似合ってるのに」 「兄ちゃんの衣装が楽しみだな。白だとデザイン性が重要だ」 「白・・・・・嫌な予感がする。また女装なら一蹴してくれる」 「それとも同じタキシード着る?」 「それも・・・・おかしいのか?」 「まぁ、男同士だから、ステレオタイプじゃできないでしょ」 「・・・・・・・・」 「俺たちらしく、いければいいんじゃない」 「俺たちらしい・・・・・難問だな」 「本番は俺が女装しようか?」 「は?」 「着物なら綺麗に化けられるかもよ」 「そんなことしなくていい!」 「俺が組長のパートナーなんだから・・・俺が『嫁』なんでしょ」 「こんなデカい女、嫌だ」 「今じゃ、嫁がデカいカップルだっていっぱいいるよ~。固定観念ってダメだよ」 「お前は自由な考え方でいいな」 「昔は兄ちゃんもそうだったじゃない。一本気で、よく突っ走ってた」 「そんなことすると、後でお小言を喰らう」 「そうだね・・・・よくアイツにお仕置きをされてた」 明らかに佐竹とのことをさらりと言ってのける。 この前までは、佐竹に嫉妬している様子だったのに、この頃は、あまり佐竹を意識していないように見える。そのことがやけに引っかかる。 「あの頃のこと、良くしゃべるな」 「ああ、昔はあの男の事嫌いだったけど、あっさり兄ちゃんの事手放してくれて感謝してるんだ」 「感謝?」 「兄ちゃんが今あるのも、佐竹との時間があったからで・・・・今は丸ごと俺が手にしてるんだから、とやかく言うことないかなって」 「・・・・・・大人だな」 「まだまださ・・・・この前の事件は、俺の浅はかだったことが原因でしょ。それは反省してる」 「・・・・・あれは俺が突っ走った結果だ」 「でも、久しぶりに突っ走って、身体が先に動いたって感じ。すごくいいなって思った。俺が守ってもらうんじゃなくて、守らなきゃって気が付けた」 「俺を・・・・守る」 「それが若頭だってこと。組長を守らなくてどうする。兄ちゃんが動いてしまったのは、俺が頼りないからでしょ」 「そんなことは・・・・・」 「だから、まだまだ半人前と思われたくないの。俺がアンタを守る」 そのまま桂斗は俯いて黙ってしまった。
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