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「白のタキシード、兄ちゃんの方が似合うんじゃないかな」
「俺はブラックの方が・・・」
「黒じゃいつもと同じでしょ。胸に大きな花とかつけてさ」
「似合わねぇ」
「コーディネートさせて、ね」
弟のお願いについつい許してしまう。お願いは一度聞いてしまうと際限なくなってしまう。
「着る機会がないんだからいらない」
「そう云わずに・・・・ハワイとか銃の鍛錬で行く時、二人っきりで結婚式しようよ」
「は?」
あまりに小っ恥ずかしい提案に、思わずその二人の姿を想像してしまった。
「お前、それ女の発想だろ」
「よく言われる・・・俺って女子力高いって。この前も、見回りに行ったとこの女の子が、ドレス汚しちゃって・・・・即席で、カーテン使って服こしらえたら喜ばれた」
「そんなことしたのか!」
「まぁ、即席だから・・・・その場限りだけどね、服作ったり、小物作ったりするのは好きな方」
「変わった男だな」
「料理もうまくなったでしょ。これで掃除が完璧なら最高なんだけど・・・・そこは自信がない」
「俺よりかなりいいと思うけど」
「兄ちゃんはガキみたいに散らかすから・・・・俺は散らかしはしない」
「悪かったな。でも意外な一面見た気がする」
「また惚れ直した?」
「まぁな」
『バカか』と一蹴されると思ったのに意外に褒めてくれた。理玖は、こんなことが特技だと思ってもなかった。
「俺さ、前の一本気で突っ走る兄ちゃんが好きだよ。あんまり周りの事とか、組の事とかで気持ちを押えて欲しくない。それを引き受けるのは俺でいいと思ってる」
「・・・・・・・・」
「兄ちゃんみたいなまっすぐな所を持ち合わせてないから、そういうとこ羨ましいのもあるんだ。
ほら、俺っていろいろな所、たらい回しにされてたから、他人のご機嫌を伺ってうまく立ち回るのばっかりうまくなっちゃってさ。結構性格歪んでるんだよね・・・・中身は冷めてるの。兄ちゃんみたいに感情をストレートに出して、騒動も早くてって人初めて見たもん。子供の頃から、すごいリスペクトしてたよ」
「褒められたことじゃない」
桂斗はバツの悪そうに俯いた。そしていつもの歯切れのいい口ぶりでなく、ぼそぼそっと続ける。
「・・・・・お前、ガキの頃、たらい回しになってたのか」
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