今宵の月は・・・・

18/25
前へ
/119ページ
次へ
理玖は、毛糸のような赤い糸で欲望の根元をキュッと縛る。 「出したい・・・縛らないで・・・」 「ダメ、精子の無駄遣い反対!」 弟のバカな冗談に付き合う余裕もない。後ろを掻き混ぜられている刺激と口腔内を貪られる快楽で、桂斗はもう限界点を超えていた。 理玖はいったんベッドを降りて、膝に残っていたズボンや下着、肌蹴たYシャツを脱ぎ捨てた。 一糸纏わぬ背中に現れた一羽の鳳凰・・・極彩色の雄々しい姿が眼前に晒される。 佐竹の朱雀とはまるで違う。彼のは火の鳥だけに、真っ赤な鳥だった。炎をまき散らす灼熱の鳥。 理玖の背中の聖獣は、黄色や緑、赤・・・・様々な色彩が鮮やかに羽を広げている。 まだ二十歳だから細身の身体だが、背筋も胸筋も見事なまでに美しい造形。 その体に刻まれた大きな伝説の鳥は、あくまで豪華で優雅に舞っている。 「綺麗だ」 「披露宴では脱いで披露するんだよね」 「誰にも見せたくない」 思わず口走った言葉に、彼は微笑んだ。 「これは、ここぞという時に見せる『脅しの道具』だけど、極道者としての覚悟を見せるという意味もあるんでしょ?滅多に使わないから、アンタだけが毎日眺めてやってよ」 「毎日・・・・この美しいモノを見ていいのか?」 「その代り、アンタの龍が泳ぐところも毎日見せてくれるよね」 「ああ」 「じゃあ、それでチャラだ」 拘束されている兄にまた甘い口づけが降ってくる。 佐竹の身代わりでもなく、この若者を愛している・・・・桂斗の目から一筋、光るものが零れた。 「極道の時のカッコいいアンタも、二人きりの時のエロいアンタも大好きだよ。愛してる」 いつもだったら軽いあいさつ程度と一蹴するが、今夜の理玖の言葉は素直に浸みる。 「俺を・・・・めちゃくちゃに・・・・していい・・・・から・・・」 「俺がもう骨抜きなんだけどね・・・・桂斗も骨抜きにするから」 愛するものを失って絶望していたのに、また他の人間を愛している。 まったくなんて弱い人間なんだろう。 「すっかり解れたから、俺をナカにいれて」 「ああ、来いよ。欲しかったんだ」 こちらを見る目が限りなく優しい。すべてのオモチャを取り出して、自分のモノを宛がった。 少しずつ焦らすようにゆっくりと・・・温かい粘膜が絡みつくように迎え入れてくれた。 「ア・・・あぁぁ・・・・・」 息を吐きながら大きな異物を飲み込んでいく。兄の膝を抱え込んで自分の体重を乗せながら、彼の領域を犯していくのだ。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

345人が本棚に入れています
本棚に追加