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空に突き刺さって、天にも届きそうなビルが立ち並ぶ新宿。
その高層ビルの高級ホテルの上層階にいた。ココは景色がいい。今日は冬晴れだから東京の奥にある山々と頭だけ出した富士山が見える。
「昼間っから、こんな明るいところで会食ってもなぁ」
雷文桂斗は、ソファに座って食前酒で出てきたシャンパンを口にした。
「昔しただろ、カフェでデート」
「デート?」
横にいた弟の理玖が、驚いたように大きな声で聞き返してきた。
「あ・・・・すいません」
「なーに、いいってことよ。俺たちの仲じゃないか、堅苦しくなくいこうぜ」
雷文組長の前には、同じくシャンパンを傾けて、おかしそうにからからと笑う色男。
髪は短髪で、前髪がはらりと目にかかっている。奥に隠した目には裏社会で生きる者の鋭い目がのぞいている。
「コト。その後、他の動きはどうだ」
「まだメシも喰ってないのに早々にその話か?無粋なヤツ」
「無粋で悪かったな。お前みたいにこだわりがないだけだ」
「話なら弟くんの方が合うかな」
「いえ、小野塚組長。自分は経験も浅いのでそれほどでは」
「モデル辞めるとか聞いたけど本当?」
「極道が顔出ししてはいけないと思いますし」
「なら下着モデルとか、鼻下だけの写真でもいいんじゃないか?タッパもあるし、よく身体鍛えてるし」
「どこで見たんですか」
「パンフ・・・会長のとこの」
「ああ、”SARAI”ですか」
「会長が新作出ると送って来るんだ。俺は上客だぞ」
「そんな気はしてましたけど・・・・スーツも会長のとこで作ってますよね」
「よくわかるな」
「生地とかスタイルとか・・・・なんとなく」
「嘘つけ、わかってたんだろ」
小野塚組長と盛り上がっていると、つまらなそうに一人が欠伸をした。
「ファッション談義は終わったか」
「お前も残念なヤツだな。その風体にセンスが加われば、弟くんをもしのぐモデルになるかもしれないのに」
「どうせねぇよ。それに俺はタッパがない。顔も平凡だしモデルに不向き」
「そうか?アイドル顔だぞ」
「女顔だっていいてぇのか、あ?」
「かわいい系男子って奴だろ。今どきってやつだな」
「別に今どきだって関係ねぇ。極道だし」
「まぁ、顔はゴルゴみたいのが凄みが出ていいんだろうけどな。この中じゃ、お前だけだ」
小野塚組長は自分の隣に立つ若頭の東郷の方を見た。
「失礼ですね、組長は」
「あははは・・・・わりぃ」
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