今宵の月は・・・・

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ウェイターが来て食事の席に導かれる。 「お前も喰え」 東郷に組長が促す。 「いえ、でも」 「今日は雷文の弟くんとも会食するからな。お前だけ可哀想だろ」 「大丈夫ですよ」 東郷は周りを見渡した。全員極道だというのに、美しい顔立ちの男たちだ。その中にいるといつもと違う意味で気後れする。 「東郷、雷文組長に調べたことをお伝えしてくれ」 「かしこまりました」 そういって手帳を取り出したが、前菜が運ばれてきのでそのまま閉じた。 「うまそう」 理玖の顔がぱっと綻ぶ。隣で弟の顔をみて、ふいと顔を背けている・・・・なにデレてるんだよ・・・・丸わかりな男だな。小野塚コトは、目の前の男たちの恋愛事情を少し垣間見ることになった。 「桂斗、やっと縁談話から解放されるな」 「ああ、副会長連中が縁談をゴリ押ししてくるから、挨拶するのも面倒になってた」 「2月に結婚披露宴だって?」 「そうなんです。ありがとうございます」 理玖は丁寧にお辞儀をした。 「雷文の嫁になる覚悟ができたってとこか。桂斗はかわいいウェディングドレス着んのか?」 「着ねぇわ!」 コトは意地悪い笑い方をして茶化す。東郷は雷文組長を凝視した。 『この方がウェディングドレス??』 「東郷、知らなかったのか?コイツ、弟くんを嫁にするんだ」 「嫁にする?」 今度は隣のイケメン若頭を凝視する。 「雷文組長が弟君を嫁にして、ウェディングドレスを着るんですか?」 「あははは・・・・おかしいよな。どうやったって桂斗の方が嫁だろ。あははは」 「うるせっ!組長のパートナーは嫁っていうんだよ」 「理玖がウェディングドレスは似合わないもんなぁ」 「別に俺は女装してもいいんですけど、守り手があんな恰好じゃ、組長の護衛はできませんし」 東郷は、考えがごちゃまぜになって、言葉に詰まってしまう。 ようやっと紡ぎだした言葉が、「お二人とも美形なので、お似合いだと思います」だ。 「ぎゃははっ・・・・東郷、ウケけるわ、それ」 「ウケてんじゃねぇよ」 余計、雷文組長のご機嫌を損ねてしまった。 ウチの組長も、もとは女性。性転換して男になったという変わった経歴だが、非常に男らしい方だ。 雷文組長は男色と聞き及んでいたが、結婚相手が弟の若頭というのには面食らった。 いろいろなセクシャルな部分でそれぞれ苦労されたのだろう。 それだからこそ、盟友となられたのかもしれない。
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