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理玖が前菜を平らげたころ、東郷は手帳を取り出して報告を始めた。
「元篠崎組の残党だった男が、龍仁会の反会長派に接触を図っていて、切り崩しに動いています。副会長の佐々木翁が、旗頭になって団結を図っていたようで、会長が佐々木を始末してからの動きですが、総崩れになるどころか、現在も一枚岩で動いているようです」
「誰か他の者が旗頭になったってことか」
「はい。情報によると・・・アメリカから帰ってきた篠崎の息子がいるとか」
「・・・・・・っ!!」
雷文組長は眉をひそめ、苦悶の表情を浮かべた。若頭が隣で声を上げる。
「篠崎隆弘・・・・アメリカになんか帰る気なかったんじゃないか」
「お会いになったのですか?」
東郷は雷文兄弟に投げかけると、弟君が即座に答えた。
「アメリカから用事があって帰ってきたと言っていた。でもその”用事”って篠崎組の再建とか、それとも組長への恨みを晴らしに来たんじゃないかって言ってやったんだけど・・・・」
「否定したわけだな」
小野塚組長は腕組みしながらため息をついた。
「・・・・・アイツ、やっぱこれが目的で」
「桂斗の高校時代のダチだったよな」
「ああ」
「ダチだろうと、刃向かうものは・・・・」
「殺る」
雷文組長ははっきり言い切った。目は冷たく青い光を放ち、感情の揺らぎは全くない様子だった。
ガチャーン!!
高層ビルの窓ガラスが割れ、店の調度品が外へと吸いだされていくのが見えた。
ガラス清掃の作業服を着た男たちが二人、ガラスが割れたところから侵入してくる。手には拳銃らしきものが握られている。
「みんな伏せろ!なにか重い物に掴まれ」
桂斗が叫ぶ。
「こんなとこまでお出ましとはな」
コトが苦笑いをしながら、スーツの下の拳銃を取り出した。
「組長!」
「東郷、お前は裏に回れ」
「御意」
東郷は物に捕まりながら消えていった。
「桂斗、行くぞ」
「ああ」
「理玖、組長を守れよ」
「当たり前です!」
コトと桂斗は敵の方に飛び出して行った。後ろで理玖が援護射撃をする。
飛び出した二人は、ソファに隠れながら敵に近づいていく。店員たちは裏手やバーカウンターに隠れている・・・気にする必要はなさそうだ。
桂斗が飛び出して、二人の敵はそちらに拳銃を向ける。脇にいたコトが手前の男の拳銃を吹き飛ばした。後ろの男の手元を東郷が撃ち、拳銃が転がる。
丸腰になった男たちは、桂斗を拳で殴りかかってきた。
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