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久しぶりに日常が戻ってきた。
K/Yカンパニー(会長のアパレル会社)に顔を出す。
桂斗は夜行性なので、昼間では寝ている。かわいい寝息を立てている恋人を置いて、そっと出てきたのだ。
「よう、久しぶりだな」
なにもなかったかのように、会長は声をかけてきた。何もかもわかっていて、まったく白々しい。
「プライベートでごたごたがあったんで」
「恋人とはうまくいったか」
「ええ、まぁ。まだ体調が万全じゃないんですけど」
そこまで話したところで、後ろからドタバタと走ってくる音がする。
振り向くのも憚られる・・・・予想が付いているからだ。
「えー恋人って何?私の事?」
「テメェの事じゃねぇよ。婚約者がいるって言ってんだろうが」
「ねぇ、りっくんって本当に恋人いるの?」
「最初に言っただろーが」
「社交辞令かと思った」
社交辞令って…そうなことを言うのか?
このウザい女は、会長のブランドのモデル・安斎なつみだ。なぜかうるさく交際を迫ってくる。
「わかったろ。ベタベタすんな。あくまでも仕事だからな」
「なつみちゃんのドレスは出来ている。お前の方は試作品で来てるから、さっそく試着してもらうかな」
「・・・・なら、なんでこの女いるの?」
「りっくんの見ないと・・・バランスってもんがあるじゃな~い。それにぃ~”この女”って言わない。失礼よ」
「お前は散々失礼なこと言ってくてんのに・・・ちょっとは失礼って感覚あるんだな」
「なつみ、結構ツンデレさんも好きだから。そんなりっくんも好きだよ、てへ」
全くいい加減にしてくれ!婚約者もいる男をどうしても自分に振り向かせようというのか。
他人のモノは美味しく見えるという、”欲しがり屋”女か。
「私のウェディングドレス、すごく素敵に仕上がってるの。りっくんも見に来て~」
「どうせ撮りの時、見るだろ。いいよ」
「もう、遠慮しちゃって・・・」
「・・・・・・・・・・・」
相変わらずアホ女だ。早くこの仕事終わらせたい。
会長の思惑はなんだろう。俺たちの中を揺さぶろうとしている。わざわざ会社に呼んで、なつみと一緒のところを見せたり・・・披露宴を成功させたいんじゃないのか?
ただ兄ちゃんや自分の気持ちを傷つけて遊んでいるのか。どっちにしてもムカつく。
「そうだ、りっくんのお兄さん。顔似てないね。りっくんはイケメンだけど、お兄さんは・・・・」
「かわいい系だ」
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