今宵の月は・・・・

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「えーっ。そうかなぁ~、目つき悪いし、冷たそうじゃん。顔は俳優の山〇健人風だけど、怖い感じした」 「当たり前だ。あの人は・・・・」 「歳は1つか2つ上?」 「バカ・・・・7つも上だ」 「えー、結構おじさんじゃん」 「大人と云え。俺が老けてるから丁度いい」 「なにが丁度いいのよ~。お兄ちゃんとの歳の差なんてどうでもいいじゃん」 「どうでもいい。何歳年上だろうと、兄貴だろうと・・・・かわいいことに変わりない」 頭の中は桂斗の事でいっぱいになった。笑った顔がかわいい事、組長でとして檄を飛ばす兄のカッコよさ・・・・すべて好きだ。 「お兄ちゃんがかわいいとかありえなくない?私のお兄ちゃんだったら引くわー」 「俺の兄貴だ。もう黙れ」 「なによ!社長の息子だからって・・・・りっくんってブラコン?ヤバくない?」 だんだんなつみの言葉を受け流せなくなってきた・・・・限界だ。 「さっきからウチの家族の事、つべこべ言うんじゃねぇぞ!」 堅気の女と思って少しはトーンを落とした。極道の時の十分の一に怒り方に抑えたつもりだ。それが、なつみをヒートアップさせたのかもしれない。彼女は甲高い声で反論してきた。 「お兄ちゃんがかわいいとか、男子でそれはヤバいよ。だから注意してあげただけじゃん」 「お前に言われる筋合いはない。あの人は俺の恋人だ。文句言うんじゃねぇ!」 「うそ!あんたホモなの?きもーい!!」 思わず胸ぐら掴んで殴りそうになった。 その手首を掴んだのは会長・・・・いなくなったと見せかけて、二人のやりとりを聞いていたんだ。 「会長!お前の雇ったモデルだろ。コイツ辞めさせろよ」 「理玖、後ろ見てみ」 会長の穏やかな声に促されて後ろに振り向いた。 そこには・・・・言葉を失って、呆然とこちらを見ている桂斗がいる。 「兄ちゃん・・・・」 その声を聞いて、兄は静かに目を閉じ、くるりと引き返そうとした。 すると、なつみが理玖の手を振り払って桂斗に掴みかかる。 「弟を恋人にする兄なんて、おっかしいんじゃないの?それも弟をホモにするなんて、この変態!」 「なに言ってんだ、この女!」 なつみを引き離そうとして手をかけた理玖を、穏やかな声で彼は制止する。 「理玖、もういい」 「でも・・・・」 「この女の言ってることも一理ある」 「ほら、認めたじゃない」 勝ち誇ったような顔をして振り向くと、むつみは尚もしゃべり続ける。
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