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「りっくんを解放してやんなさいよ。女の子の方がいいに決まってるでしょ。兄弟で、男同士で結婚するとかできないんだから」
「・・・・・・・・」
「なつみ、もう止めろ!」
理玖が再び掴みかかろうとすると、目を伏せていた桂斗の目が鋭く光った。
「俺は理玖を解放しない。一生俺のモノだ」
「なんですって!このホモ野郎!」
拳を振り上げたなつみを片手で受け止めた。
「女、理玖はお前にはやらない。諦めろ」
「社長も、兄弟で結婚とかありえないでしょ。反対しなさいよ!」
今度は会長まで巻き込んでくる。形勢が不利になってきているのに、本当に往生際の悪い女だ。
「俺はコイツ等の恋愛、認めてるからねぇ~。俺も男が嫁だし、それはそうでもいいかなって」
会長はいつものちゃらい口調でさらりとそんな事を言う。
この人も、俺たちの事は認めているんだ。世間的にどうこうと、言ったことがない。
もちろん、自分たちの結婚にしてもいろいろあったんだろう。それを乗り越えたからこそ、今の彼らがいるのだ。
「親がそんなだから子供が変態になるんじゃない!あたし、この仕事降りるわ」
「そうなの?それは残念。お宅の社長に言って映画のスポンサーの話受けようと思ってたんだけど止めようかな」
「えっ、うそ。そんな話聞いてない、マネージャー」
すると側に控えていたマネージャーが渋々口を開く。極秘事項だったようだ。
「堤社長から、そのような話があるとは聞いていました。今回の仕事もその布石だと・・・・」
「なんでそう云うこと早く言わないの!」
なつみは、桂斗を掴んでいた手を放して会長にすり寄った。
「ごめんなさい。お話、聞いてなくて~」
「なら、僕の息子たちに言った無礼を謝ってくれる?」
「もちろん」
なつみはさっきと全く違う笑顔で近づいてきて、一つ溜息をついた。
「さっきのは勢い余って言ったことだから、気にしなくていいわ」
そう云って踵を返したので、間髪入れずに理玖が口をはさむ。
「謝罪になってねぇよ。兄ちゃんに謝れ」
一瞬、奥歯をギリッとかんだあと、なつみは作り笑いを浮かべた。
「ごめんなさい。失礼なこと言ったわ」
「これからは、相手を選んで言わねぇと命がねぇぞ」
「ご忠告ありがとう」
つかつかとヒールの音を高らかに鳴らしながら、なつみはネージャーとその部屋を後にした。
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