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「気にしていないはずだった。でも、自分の中で思っていたことを見透かされたような気がして・・・・正直参った」
「思っていたってなに?弟だからいけないとかそういうこと?」
「俺が、お前のまっすぐな道を曲げたんじゃないかってことだ」
「俺の道がまっすぐだなんで誰が決めた?・・・・俺たちは元々悪党なんだし、社会倫理とかどうでもよくねぇ?」
「いや、俺たちは極道だ。礼を守り、義を重んじる者だ」
「そんなの、江戸時代ぐらいまでだろ。俺たちは国にも見張られている反社会団体だ」
「確かに俺たちの生きるのは闇世界だが、根底に義がなければただのマフィアだ。赤龍と同じになってしまう」
「兄ちゃんの考え、すげぇ硬いよ」
「俺は、そう佐竹に教わった」
「・・・・・あの堅物がっ!」
吐き捨てるように言うと、桂斗は首を振った。
「俺たちが手を汚してでもやらなきゃいけない仕事は、本当の意味での『社会のダニ』を殲滅することだ。そのために手段を択ばないだけのこと」
「その”義”ってヤツは、兄弟の恋愛は御法度ってこと?」
「これは・・・・個人的に引っかかっていることだ。お前こちら側に引きずり込んでいいのか・・・今でも揺らいでいる」
「前にも言ったろ。俺は自分の人生は自ら選ぶ。俺はアンタと生きることを選んだんだ。兄ちゃんに言われるこっちゃねぇ」
「佐竹の気持ちが、今になってわかる」
「なんだよ。佐竹の気持ちって・・・」
「俺が散々アプローチしてもなかなか『うん』と言ってくれなくて・・・・何回も拒絶された」
「確かに・・・・兄ちゃんを振るなんて100年早いわ・・・ムカつく。でもアイツ、兄ちゃんの事を好きなの、超バレバレだったけど」
「そうなのか?」
「兄ちゃんが組長になってすぐだったかな。子供の俺にもバレバレだった。だからアイツの事、大嫌いになったんだもん。それが結婚するとか言い出すし・・・・マジ参ったよ。兄ちゃん取られるって思ってさ」
「そうだったのか・・・・」
「それで?佐竹の気持ちってなんなの?」
「年齢が上な分、そう云うことに責任を感じてしまう」
「桂斗は俺が居なくていいの?」
一瞬、唇がかすかに震えて、苦悶の表情を浮かべる。
「・・・・・・・手放せ・・・・ない」
「なにを?」
ちゃんと答えが欲しい。ハッキリと彼の言葉で・・・・。
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