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翌日の事である。
結馬は同僚の梶木征雄と共に、昼食のため社内の休憩所でテーブルを囲んでいた。
この休憩所は開放感のある造りになっていて、天井が高くフロアも広い。
そこに洒落た丸テーブルとデザイナーズチェアが心地よく綺麗に並べられていた。
結馬はこの場所が気に入っていて、仕事が終わった後にしばらく寛いでいる事もしばしばあった。
結馬は食事をすませると、頃合いを見計らって最近の不思議な出来事について征雄に話をしてみた。
「――ていう感じなんだけどさ、どう思う?」
「何それ、マジで?まさかのストーカーなんじゃね?」
征雄はからかうようににやりと笑いながら結馬を見ている。
実際、からかっているのだろう。
「結馬のファンクラブの子じゃなかったら、ストーカーだな。危ねぇぞ」
「他人事みたいに言うな。それに、ファンクラブなんていつできたんだよ」
「さぁ」
征雄は笑っている。
征雄とはそういう男である。
呆れた奴だ。結馬はそう思った。
征雄は結馬と同期である。大学を卒業後、そのまま就職をして、初めてまともに声を交わしたのが征雄であった。歳も同じということもあって、それ以来親しくして一年ほど経つ。
征雄は短髪をやや茶色に染めていて比較的大柄であり、一見してがさつな印象を受ける。それでいて他人をよくからかっているのだから尚更である。
だが以前、同僚の数名で呑みにでかけた時、酔いつぶれた者を熱心に介抱していた事があった。
征雄とはそういう男でもある。
なかなか憎めない奴なのだ。
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