0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、暫く三人で話をしていたが、結局、解決策はでなかった。
そもそも視線を感じるというだけで、何か事件が起こったわけでもないのだからそれも当然である。
それに、話の最後にはただの世間話になっていた。
「あ、わたしそろそろ時間だから戻らないと」
薫は気付いたように時計を見て席を立った。
「俺達もそろそろ時間かな」
結馬も時計を見て席を立つと、まだ座っている征雄を促した。
征雄が、めんどくせぇなと小声で愚痴を吐き出すと、座ったまま背を伸ばした。
「しょうがない、行くか」
征雄が席を立つ。
「それじゃあ、なにか進展があったら教えてね」
「はいよ」
結馬は薫と別れ、征雄と連れ立ってオフィスに戻っていった。
終業。
自宅への帰り道。最寄りの駅で電車を降りる。
すると駅を出たところで視線を感じた。
結馬は辺りを見回したが視線の送り主らしきものは見当たらなかった。
「またか――」
結馬はそう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!