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――えっと。
……こういう時はいったい、どうしたら……。
亜優の押し殺したような嗚咽を聞いているうちに、何もしてやれないこっちが泣きたくなってくる。
途方に暮れたまま丸まった背中を見ていると、小さな肩の向こうからひょこっと白い耳が覗いた。
亜優のツインテールを暖簾のように顔で避け、こちらにじっと何かを訴えて来る小さな瞳。
「……」
――いやいや。無理だって。
俺、お前に近づくとくしゃみと鼻水が止まらなくなるんだから。
小さい頃より良くなったとはいえ、連れて帰ったりしたら母さんが絶対――。
「にゃー」
「……」
――マジで、……カンベンしてよ……。
亜優の泣き声と仔猫の鳴き声が絶妙にハモるのを聞きながら、俺はため息をひとつついて、ゆっくりと足を踏み出した。
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