【6】消えろ、きえろ、きえろ

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「映画が好き、それにうそはないと思うけど……でも」 「いちばんじゃない。そう、言いたいんだろう?」 もうだめだ。誤魔化せない。 観念したぼくは力なく笑い、仲井さんよりも先に答えを出す。 彼女の言う通り、映画が好きな気持ちにうそはない。 ただ、その好きになった理由はしごくクダラナイものだ。 そして、いちばん好きだったものはギターだった。もう過去形だけど。 「今のきみは何を言っても痛くないよ中井くん。わたしがきみの気持ちを持っているから。良ければ話してくれないかな? ギターのことや、映画のことを」 「気分が悪くなるかもしれないよ。特にギターのことは……ぼくは思い出す度に吐き気を覚えていた。仲井さんが耐えられるかどうか」 「中井くんはわたしに気持ちをぶつけろって言ってくれた。じゃあ、わたしも言うよ。きみの思っている気持ちをぶつけてよ。わたしは今、誰よりも中井くんの気持ちが分かっているよ」 すごい殺し文句だ。 別の場面だったら、ぼくは勢いに任せて告白していたと思う。 ここまでしてくれるなんて、うぬぼれるじゃないか。 またしばらく沈黙が流れる。 背中に預けた鏡を横目で見ると、相変わらず情けない顔を作ったぼくがそこにはいた。 何もかも逃げ出したいような、そんな弱虫な顔だ。 けど、今は逃げることなんてできない。 仲井さんが手を繋いでくれているから。 何があっても放さないと言わないばかりに、つよく、つよく。
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