【6】消えろ、きえろ、きえろ

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「中学に上がってもぼくはギターを続けた」 その頃には、ある程度ギターが弾けるようになっていた。 そんなぼくは少し欲張ってギターの話ができる時間が欲しいと思うようになった。 独学は楽しいけど、誰かとギターの話をしたら、もっと楽しくなるんじゃないか、と思ったんだ。 だから部活でギター部なんてものはないかな、と思ったけど、残念なことにぼくの通う中学にそんなものはなかった。 ギターを取り扱う軽音楽部もなく、あるのは吹奏楽部だけ。 そこでギターを弾かないかな、と思ったけど、淡い希望はすぐに打ち砕かれた。 ギターにしか興味がなかったぼくは、とてもがっかりした。 同じ頃、ぼくは同じクラスになった小金井旭と出会う。 そいつは、ぼくと同じように独学でギターを学んでいた、いわゆるギターバカ。 おかげですぐに友達になれた。 誰よりも仲良くなったぼく達は、いっしょに雑誌を読んだり、楽譜を眺めたり、ギターの練習で盛り上がった。 共通の趣味を持つ人間と話すことが、こんなに楽しいなんて、とあの頃は思っていた。 「小金井さんって……今日会った人?」 「うん。旭はぼくの親友だったんだ。あいつとは、毎日のようにギターの話ばかりしていたよ。でも話すだけじゃ物足りなくなってさ。ぼく達はギターを思いきり弾ける場所を探し始めた」 「家でも弾けるんじゃないの?」 「親がうるさくてさ。家の中で楽器を弾くと響くじゃん? ぼくと旭は筋金入りのギターバカだったから、ついつい時間を忘れて弾いちゃって。近所迷惑にもなるし」 一々親や近所の迷惑を考えることが億劫になっていたぼくは、旭とストレスを感じることなくギターを弾ける場所を探した。 都合の良い場所なんて無いだろうと、子どもながらに分かっていたけど諦め悪く探していた。 奇跡的に見つけたのは夏休みに入る前のこと。 偶然にも、近くの公民館がホールを貸していることをぼく達は知る。 そこで楽器を弾いているクラブがあることも。 早速情報を頼りに、公民館に行ってみると、確かに楽器を弾いているクラブがあった。 皆が皆、家で練習ができず、思いきり楽器を弾ける場所を探し、ここに辿り着いた人達ばかりだった。 人数は二十人ほど、老若男女オトナ子ども色んな人達がいた。
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