【6】消えろ、きえろ、きえろ

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毎週火曜日に集うクラブは五百円の月謝を要求したけど、それはホールを借りる料金として割り当てられる。 思い思いの個人練習をするために集まるクラブで、ひとりで練習したければひとりで。 誰かと練習したければ、いっしょに。そんな自由で良心的なクラブだった。 ぼくと旭は迷わずクラブに通い始めた。 なにより楽器が思いきり弾けることが魅力だったから。 そして夏休みに入ると、他クラスの岡本菜々がクラブに通い始めた。 旭が声を掛けたらしい。 ふたりは小学校からの付き合いで、お互いに楽器を弾くことを知っていた。 「ま、菜々は旭を追っかけてきたんだろうけど。あいつ、旭が大好きだったから」 菜々は旭ばかり見つめる、とても真っ直ぐな女の子だった。 旭がギターをしているから、とギターを触ったり、あいつからコードを教えてもらったり。 本当に得意な楽器はキーボードだったくせに。 そんな彼女にほのかな恋心を抱いた日もあったけな。 苦々しく笑うぼくに、仲井さんがヒヨコのように唇を尖らせた。妙につよく手を握り締めてくる。 「旭伝いにクラブで楽器を弾く中学生がもうふたり増えた。みんな、ぼくの通う中学の奴等だった。旭を通したこともあって、みんな同学年。先輩後輩関係もなくて気が楽だった」 その内、五人で行動することが多くなった。 旭以外は他クラスではあったけど同学年だからこそ話せることもあったし、楽器好きって共通点もあった。 同年代だから、みんながみんな遠慮もなかった。 思い思いの楽器を弾き合って、どこが直した方がいいか、どこが良かったかを意見し合った。あの時間は本当に楽しかった。
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