【6】消えろ、きえろ、きえろ

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――バンドでもやってみようか。 運命の歯車が狂ったのは、そう発言したぼく自身によって。 なんとなく思ったんだ。 みんな思い思いの楽器を弾くのは楽しいだろうし、それを見たり、聞いたりするのもいいけど、いっしょに演奏したらもっと楽しそうだなって。 反対の意見は唱えられなかった。 みんな同じことを思っていたようで、二つ返事でOKを出した。 せっかくバンドを組むのだから目標も決めた。 今度ある中学校のバザーフェアで演奏する。これがぼく達の決めた目標だった。 バザーフェアは毎年PTA主催の行事で、地元の人と学生が交流するために設けられたものだった。 体育館を借りた出し物大会もあるから、それに出てみようと話し合った。 それからは毎日練習だ。それぞれの楽器は弾けても、それを合わせることは難しく、一曲弾き終わるだけで精一杯だった。 ちなみに、ぼく達が組んだバンドは三人ギターとドラムとキーボード。 ひとりはギターを弾きながら歌う。 ド素人で、しかも独学で楽器を学んでいたぼく達だから、それはそれは演奏することに苦労した。 だけど、ぼくは楽しかった。 少しでも演奏がひとつになれるように、と五人用に楽譜も用意したし、ワンポイントも押さえた付箋紙も貼った。 誰かといっしょに演奏することが楽しくてしょうがない。 いつか、この五人で高校生向けのバンドコンテストに出られたらいい、そう夢を見るまでになっていた。 一曲演奏できた日には、本当に感動に浸った。 だけど。 「ぼくは、他の四人に比べて演奏を合わせることができなくて。凡ミスばっかりしていたんだ。練習はしていたんだけど、音合わせになると下手こいて」 今思うと、好きゆえに気持ちが先走って力んでいたんだと思う。 どうしても凡ミスを演奏で一回はする。 それに最初は皆、許してくれていたんだけど、だんだんと表情が険しくなった。 皆も楽器や演奏することが大好きだ。 ステージに立つからには完璧な演奏にしたい気持ちが強かった。 それも分かっていたから、ぼくは最後まで残って練習をした。足を引っ張りたくない一心で。
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