【6】消えろ、きえろ、きえろ

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ハブられていることに傷付いているぼくがいた。 それを笑って虚勢を張るぼくがいた。 そんなことで傷付いているなんて、と悪態をつかれることも怖かったし、弱い自分と向き合うのも嫌だった。 同時期、ギターを弾く度に胸が痛くなり始めた。 ギターを練習する時、先に帰ると告げてくる四人の背中を見送る時、またハブられているんだとため息をつきたくなる現実と向き合った時――あんなに楽しいと思っていたギターが楽しく思えなくなってきたっけ。 「そのこともあって、ぼくはスランプに陥った。ギターを上手く弾こうと思えば思うほどミスをするんだ。演奏は上手くいかないし、四人に白い目は向けられるし、悪循環だった」 「……だからギターが?」 「いや、その頃はまだ好きだったよ。ギターを嫌いになった決定的な出来事は、目標にしていたバザーフェア直前。ぼくは怪我をした」 「けが?」 「ちょっとメンバーと喧嘩をしてね。結果、事故で階段から落ちたんだ」 その日、バザーフェアのステージにエントリーするために紙をもらった。 演奏が近いと実感したぼく達は、クラブの人達に演奏の出来栄えを聞いてもらうことにした。ちょっとしたリハーサルのつもりで。 凡ミスと責められることを恐れていたぼくは、今日だけは絶対に失敗しない、大丈夫と思い込んでいたのだけれど、まさかの事態が起きた。 ぼくの楽譜にはない盛り上がりが演奏で多々あったんだ。 それは四人が打ち合わせの時に勝手に決めた内容。 当然、参加していないぼくは楽譜と演奏の音が違うことに混乱した。 おかげで演奏することができず、途中でギターの弦を弾くことができなくなった。 クラブの人達は不思議な顔でぼくを見ていたし、メンバーはふざけるなって感じで視線を送ってくるし、ぼくはぼくで混乱した。 いやだって、練習していた内容とは違うところがいきなり出てくるんだ。弾けるはずもない。弾いたところで演奏はめちゃくちゃになるだけだ。
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