【6】消えろ、きえろ、きえろ

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仲井さんの中にある、ぼくの気持ちは映画を好きなようで、本当は諦め悪くべつのものを見ているに違いないんだ。 ああ、どうしたら消えてくれるんだろう。 彼女の中にある気持ちは害しかないのに。 「嫌うと決意した瞬間にぜんぶ消えてくれたらいいのにね。もう疲れちゃった」 一々思い出に傷付くことにも、自分の気持ちを誤魔化すことにも、嫌いだと思い続けることにも、ぜんぶ疲れてしまった。 こんな思いをするなら、いっそ気持ちなんて消えて欲しい。 ふと聞き手に回っていた仲井さんが、繋いだ手をそのまま、膝立ちになってぼくの頭を抱きしめてくる。 女の子特有のほんのり甘い匂いが鼻孔をくすぐった。心地よいぬくもりが伝わってくる。 「ごめんね。クダラナイ思いを、痛い思いをさせて」 小刻みに震えている彼女に気付き、ぼくは申し訳なさを込めて謝罪する。 クダラナイ気持ちを持ってしまったせいで、仲井さんは今、とても痛い思いをしているだろう。 じゅくじゅくと化膿した傷が疼いていることだろう。 本当にごめん、ごめんね。きみにこんな気持ちは味わわせたくなかった。 彼女がぼくに教えてくれたような、楽しくて、ワクワクするような気持ちを味わわせたかった。
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