【7】いま、ここで叫ぶ

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ギターの話題が出てきた瞬間、ぼくの鼓動が妙に高鳴ってしまう。 自分には関係のない楽器だと思っても、やっぱり思うことはあるんだな。 そこに好きだという気持ちがなくなってもさ。 今は嫌いも、つらいも、苦いも感じないけど、それでも。 「中井くん」 仲井さんにはすべて、ぼくの気持ちが筒抜けだっていうのも困ったもんだ。 誤魔化しも何も効かないんだから。痛い思いはしていないかな? 「大丈夫だよ、ぼくはだいじょーぶ。学園祭が終われば、ギターの話題もなくなるだろうし。それより、学園祭はどうする? ぼく達、一応カレカノだし一緒に回る?」 話題を逸らそうとするぼくに気付いたのか、仲井さんは曖昧に笑って頷いた。 「うん、一緒に回ろう。中井くん」 事件が起きたのは翌日の朝だった。 登校してきた仲井さんがメニューのペン入れが終わったのだと、ぼくの席に来てそれを見せていたその時、宮本が教室に入って来た柳を見て悲鳴を上げた。 何事だと思って、声の方を見たぼくと仲井さんも絶句してしまう。 柳の左手がギブスデビューをしていた。 左頬には大きなガーゼまで貼ってある。 見るも無残な痛々しい姿に、思わず宮本やメンバーが駆け寄って事情を聴き始める。 「お、おい。どうしたんだよ柳……なんだ、その格好」 「悪い。昨日、帰り道にある交差点の信号を渡っていたら、信号無視してきたバイクと接触しちまって……大した怪我はないんだけど、左手首を捻っちまった」 「お前が無事なら良かったよ。まじ、入院とかになったらシャレになんねーし。ただ、その左手じゃ弦は押さえられないよな」 宮本が恐る恐る柳に聞くと、あいつは無理やり明るい声で「無理っぽい」と言い、メンバーにごめんと頭を下げた。 歌うことはできても、ギターは無理そうだと声をしぼませる。 誰よりも悔しいのは柳だろう。 あいつは宮本と夏休み中、ずっとギターの練習をしていたと聞いているから。 それが分かっているからメンバーも柳を責めようとはしない。
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