【7】いま、ここで叫ぶ

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放課後、ぼくは教室を出て視聴覚室に逃げ込んだ。 仲井さんとの大切な約束はあったけど、それどころじゃない。 スケジュールと楽譜を眺めては、ため息ばかり口から零れる。 柳も宮本も、ぼくにとって特に仲の良いクラスメイトだ。 友達としての期待には応えてやりたいけど、ぼく自身はギターをやりたいと思わない。思えない。いや、思わないようにしていると言った方が適切だろう。 「今日は第二音楽室で練習。六時から六時半まで……か」 ステージを立つ生徒は三十分交代で教室を使っているんだろう。 前方の黒板上に掛けられた時計を確認する。 あと一時間か。あいつ等、待っているかな。 机に伏せて悶々と悩んでいると、扉の開く音がした。 顔を上げれば、仲井さんの姿が確認できる。 色塗りを放ってここに逃げてしまった手前、決まりが悪い。すぐに謝らないと。 「あの、仲井さん」 「中井くんって何かあると、ここに逃げ込む癖がついたんだね。姿を晦ましてもすぐに見つけちゃうよ」 おかげで探す手間が省けると仲井さんは肩を竦め、ぼくの前の席に座ってくる。 そこは彼女の指定席でもあった。 仲井さんはいつも、ぼくの前で絵を描いている。 「それで、中井くんはどうするの? 柳くんに頼まれたんでしょう」 何も話していないのに、仲井さんは柳とぼくの間にあったことを察している。 曰く、雰囲気で分かるそうだ。 まあ朝や昼休みのやり取りを見ていたら、誰でも分かるだろうけど。 ぼくは口を閉じてしまう。 断りたい気持ちがある一方、柳達を傷付けたくない臆病なぼくもいる。 だけどギターは弾けない。どうしたって、ぼくには。 「中井くん。今のきみは、ギターに対して恐怖も何もないはずだよ。怖いとか、つらいとか、自分を否定してしまう悲しい中井くんは私の中にあるから」 もし何かあるとすれば、中井くん自身の逃げてしまう気持ちだけだと仲井さん。 ぼくに逃げていると苦笑いを向けた。 「好きなものを嫌いだと思い続けた中井くんだから、逃げてしまうのは仕方ないのかもしれないけど……今、きみはどこかで思っている。またギターが弾いてみたいって」 アリエナイ。それだけは絶対に。 全力で否定すると、 「わたしは代弁しているだけ」 そう訴えているのは中井くんの気持ちだと、彼女は目尻を下げた。
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