【7】いま、ここで叫ぶ

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「周りのせいで中井くんはギターをやめてしまったよね。だけど、きみ自身の判断じゃない。周りを理由にしてやめてしまった中井くんは、本当は不満なんだよ。自分の好き嫌いを誰かのせいにすることが」 だから、ギターを諦めるに諦められない。 ちゃんと好きなものと向かい合わず、嫌いだと言って逃げてしまったから忘れられない。 そうして身を守ってきたぼくを否定するつもりはないけれど、でも、ぼく自身は不満でしょうがないのだ、と仲井さんは人差し指でぼくの胸を突いた。 そして映画という趣味で好きなものを偽っていることに、好きなものを嫌いだと思い続ける、この現実にぼくは嫌気が差している。 彼女はハッキリと言った。 きみは好きだったギターと向かい合いたいんだよ、と。 「本当は否定をし続ける自分に疲れているんだよ、中井くん」 「そ、んなこと」 「わたしには嘘が通らないよ。向き合うことが……怖い?」 そっと伸びてくる両手がぼくのマメだらけの左手を包んでくる。 向かい合うことが怖い? その通りだ。ぼくは怯えている。 もし向き合ったら、また傷付くんじゃないかって……そう思って。 向き合おうとする度に、脳裏にこびりついた悪口や笑い声、ギターを弾くぼくを否定する声が蘇るんだ。 ここにかつてのメンバーがいないと分かっていても、ぼくは――。 「怖い気持ちは、わたしに全部預けてよ。中井くん」 「え」 「せっかく気持ちが入れ替わっているんだよ? それくらい利用しなきゃ。 きみはただ、真っ白な気持ちでギターと向き合ってみればいい。 そして、答えを見つければいいんじゃないかな。今度は誰を理由にすることもなく、自分で決めればいいんだよ」 ギターより映画の方に気持ちを寄せたいならそうすればいいし、やっぱり映画よりギターを取りたいならそうすればいい。 どんな答えを出すにしても、それはぼくが決めるべきだと仲井さんが微笑んでくる。 そのためにも一度、ちゃんと向き合うべきだ。自分の気持ちと。
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