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口にして気付く、ぼくの本当の気持ち。
ああ、そうか、逃げてばっかりだったけど、本当のぼくはこんなにもギターを想っていたのか。
彼女の両手に右手を重ねた後、ぎゅっと力を込めて握るとぼくは席を立った。
仲井さんから手を引き、視聴覚室を飛び出す。
向かった先は音楽室準備室。
そこで柳のギターを探し当て、それを持って彼女のいる教室に戻る。
席に着いて楽譜を確認する。
弾いたことない曲だったけど、ある程度は楽譜を見れば分かる。
「弾けるかな」
久しぶりに抱えるギターと指に引っ掛ける弦。
懐かしい気持ちはどこかしょっぱく感じた。
ふと弾く前から指先が震えていることに気付く。
手を結んでは開いてみるけど、なかなか震えが止まらない。
気持ちが無くても体が恐怖を覚えているのかも。出鼻をくじかれた気分だ。
「中井くん、落ち着いて」
指先を両手で包まれると、不思議なことに震えが止まった。
ったく、ぼくはどれだけ仲井さんを心のよりどころにしているんだろうな。
ホント、今のぼくには彼女が必要不可欠なんだと思う。
「久しぶりだから下手かもしれないけど……弾いている間、傍にいてくれないかな」
うんっと仲井さんが大きく頷いてくれる。
それだけでぼくは強くなれる気がした。
大丈夫、仲井さんが傍にいてくれるからギターを弾ける勇気が持てる。
まずは一歩踏み出そう。
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