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第零章 夜霧クロトと始まりの依頼
パンッ! パンッ! パンッ!
三発の乾いた銃声が、灰色の静寂の中に響いた。
少年の持つ銀色のリボルバーの銃口から、薄っすらと煙が上がり、少年の前に居た者が、ぐったりと動かなくなり、やがて、灰に変わった。
少年がそのリボルバーで狙ったものは、不死者(アンデット)だ。不死者(アンデット)とは、死者が甦る類いのものではなく、突如として発生し、瞬時にその周りを攻撃する、言ってみれば、自然災害と同じようなものだ。
少年は、銀色のリボルバーを腰に着けてあるガンホルダーにしまうと、近くに捨てられていた黒い布を拾い、それを身に纏った。
静寂の中、少年の名を呼ぶ声がした。
「夜霧クロト君。」
少年は、ガンホルダーから再び銀色のリボルバーを抜き、銃口を声のする方へ向けた。
銃口の先に居たのは、二十代後半くらいの女性だった。黒いレディースのスーツを着用しており、黒く長い腰くらいまで伸びた、ポニーテールの黒髪の女性だ。
女性は、両手を挙げ、少年に笑顔を向けている。
「その名前で呼ばれたのは、三年ぶりだ。」
夜霧クロト、それは、この少年の名前であり、三年前まで、沢山の人から将来を有望視され、天才と呼ばれていた少年の名前だ。
「そうね。クロト君が消息を絶って三年。私たちは、あなたを探すのにとても苦労したのよ?」
女性は、クロトのことを知っているようだった。
「あんた、名前は?」
クロトは銃口を彼女に向けたまま質問をする。
「私の名前は、夕闇サヤカ。安心して、あなたの敵ではないわ。」
彼女はそう言うと、挙げていた片手を下ろし、胸ポケットから手帳を出し、クロトの足元へ放り投げた。
その手帳には、金色の百合の紋様が模られていた。それは、三年間、表舞台から姿を消していたクロトにでもわかる代物だった。
そう、夕闇サヤカは、三年前の夜霧クロトと同業者。
つまり、不死者(アンデット)退治を専門とする国家機関「Golden lily」に所属する人間だ。
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