隣りの人

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心配症の僕は、もう何度その動作を繰り返したかわからないが、かばんの持ち物をチェックした。筆記用具に受験票、飲み物に軽食、参考書類や音楽を聞くためのタブレット、そして多機能マスク。受験地に花粉などのアレルギー物質が飛んでいないとも限らないため、このマスクは僕にとっては必需品である。それからかばんの中には母が書いた手紙もあった。このご時世に手書きというのもおつなものだと思った。僕に輪をかけて心配性の母は、くどくどとやれ健康に気をつけろ、持ち物のチェックを怠るな、困った人がいたら手を差し伸べろと手紙の中でも口うるさい。そして最後の一文には、新幹線の中でも参考書を読み続け、勉強を続けなさいとあった。それを実践してしまったがために、僕は眠くなってしまったのだが。
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