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「その奇妙な店は、完全紹介制なんだよ。 それで、入ったらまず、髪の毛を1本ずつ提供させられる。 ハゲはどうしたらいいかって? 眉毛とか、すね毛とか、何かしらあるだろ。 そんなのおれの知ったことかよ。 それから1杯のコーヒーがふるまわれる。 そこそこ待たされるし、サービスってわけ。 喫茶店レベルとは言えないが、まあまあうまい。 少なくともここのよりはな。 あとは待つだけだが……残念なことに電子機器の使用は禁じられている。 店内での撮影・録画は厳禁、とあるから、それを守らせるのが目的なのかもな。 なんにせよ、スマホで時間を潰せないのは難点だ。 おれは本とか持って行かなかったから、置いてあった漫画をぱらぱらめくってみたんだけど、ラインナップは近所のラーメン屋とだいたい同じだな。 でもシミはないし、巻数も揃ってた。 で、待つこと30分。 番号札の番号が呼ばれる。 番号札? 受付の時に渡されるんだよ。 言ってなかったか? まあ、細かいことはいいだろ。 電光掲示板があって、そこに数字が表示されるんだ。 銀行の窓口みたいにな。 そこでようやく個室に案内される。 すると、笑顔で待ち構えていたスタッフが、こんなカンジで……表彰状みたいにさ、両手で診断書を掲げて言うんだ。 『おめでとうございます!  鑑定の結果、あなたが提供された髪の毛の持ち主が、正真正銘、真実のご両親であることが証明されました』 そして、コーヒー1杯分にしてはちょいと高い代金を支払って、晴ればれとした気持ちで店を出る。 それでおしまい。 1時間足らずですべての片が付く。 な、簡単だろ?」
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