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一度、父に訊いたことがある。 中学3年の夏の日。 わたしは反抗期の真っ最中。 母はやはり仕事に出ていて、わたしと父は買ってきたフライドチキンを家で食べていた。 夜だというのに暑くて、受験勉強も煮詰まっていて、ついでに蝉の声がやかましくて、なんとなくいらいらしていた。 腹の底から、意地悪をしたい気分だった。 「ねえ、わたしって本当に、二人の子ども?」 父はしばらく咀嚼を続けた。 そして、紙ナプキンで油を拭った指で頭を掻きつつ、「うん」とだけ言った。 わたしはその後に続く言葉を辛抱強く待ったが、結局父はそれ以上何も言わず、下を向いたままもそもそとチキンを食べ続けた。 会話終了。 父は何も疑っていないんだろうか。 それとも、何か知った上で、この態度なんだろうか。 どうしてそんなに落ち着いていられるの? わたし、とんでもないことを言ったよ。 あなたの愛する妻の不貞を疑ったんだよ。 「馬鹿言うな」って叱り飛ばしていいんだよ。 今思えば、父に怒鳴って叱られたことなど一度もない。 やっぱり自分の子どもじゃないから? 疑心暗鬼はわたしとともに、すくすくと育っていった。
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