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「ただいまぁ」
なみなみと注がれたプラスチックのコップを片手に、祐也が戻ってきた。
ドリンクは数種類混ぜたらしく、得体の知れない色合いをしている。
「あやしい……」
「うまいよ、この組み合わせ」
「いや、そうじゃなくてさ、さっきの話。
普通に病院とかでやったら何万円とか掛かるようなことでしょ?
結果だって、そんなに早くは判らないだろうし……第一、子どもの依頼を受けてくれるとは思えない」
「だから、そこが“奇妙な店”なんだよ」
謎のドリンクを啜りながら、祐也は悪人面を作ってにやりと笑う。
「奇妙っていうか、怪しいよ。フツーに考えて」
「みずほは頭固いんだよ。ちゃんと当たるらしいぞ。
ホラ、血液型調べるのだってさ、病院でやると待たされるし、金かかるだろ?
今や自宅でも調べられるキットだってあるくらいなのにさ。
それと同じようなもんだと思えばいいじゃん」
「それとこれは何か違うような……。
なんていうか、現代科学の壁を超えちゃっているような気がするんだけど」
「そんなこと、難しく考えてもしょうがないよ。
おれもお前も、現代科学の限界なんて知らないんだから。
……あ、今思い出したんだけど、化学のノート貸してくれない?
昨日バイト遅くてさ、1限爆睡」
祐也はいつもこうだ。
わたしがまじめに話していても真剣に取り合ってくれないし、適当なことを言って誤魔化そうとばかりする。
自分が困らなければ、真実なんてどうでもいい。
そんなふうに生きている気がする。
友だちなのに、人が本当に真剣なとき、それを見抜いてくれないのは淋しい。
そして、こちらに「空気読めない」とか「ノリが悪い」とかいったレッテルをさり気なく貼り付けようとしてくるのには、腹が立つ。
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