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「……とにかく、おれは救われたんだ。だからお前にも勧めたいと思った」
わたしのいら立ちに気付いたのか、それとも無意識か。
彼は急にまじめな顔つきになってわたしをまっすぐに見つめた。
思えば、こんな話になったのも、彼がわたしの悩みを親身になって聞いてくれたからだった。
両親のことを話してみようと思ったのは、他の誰でもない、付き合いの長い彼だったから。
まあ、信じてみても、いいかな。
「うーん、まあ……いっか。行ってみるよ」
「そうそう、そうしな」
祐也はほっとしたような顔をして目をそらし、また謎ドリンクを一口啜った。
「バイト、大変なの?」
「まあね。スマホ落としたら画面割れちゃってさあ。
修理費用自分で出せって親に言われてんだよね。そーゆーわけで……」
彼はにかっと笑いながら、小さなバインダーに留められた伝票をわたしの方へ向けた。
「紹介料は、ここのおごりね」
「別にいいけど、ノート貸してやんないからね」
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