0人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしの父は母よりひと回りも年上で、結婚当時には既に課長職に就いていた。
けっこう稼ぎもあったらしい。
結婚の理由なんて、あの母にとってはそれで充分なんじゃないか?
父は真面目で気が弱く、優しいひとだから、母に良いように丸め込まれて、結婚させられたんじゃないだろうか?
わたしがこんなふうに考えてしまうのは、母が父をないがしろにするせいだ。
夫婦仲がよかった時期なんて、あるのだろうか。
母はわたしを産んでしばらくすると、今度はクラブで働き出した。
夜、出掛けて行き、朝帰りが当たり前の毎日。
わたしが物心ついたときからそれは始まっていて、未だに続いている。
たぶんだけれど、仕事以外で、男の人と二人っきりの夜もある。
小さい頃はいつ離婚するのかとはらはらしたが、少なくとも母にはその気がないらしい。
考えてみればそうだ。
もともと、安定した生活のための結婚だもの。
たまに学校行事を見に来る母は、どこの家のお母さんよりも若くて綺麗で、子どもの頃はそれが誇らしかったけれど、思春期の訪れとともに羞恥心が芽生えた。
小学校の高学年ともなると、お願いだから目立たないで、と心の中で唱えるのが癖になっていた。
授業参観のお知らせをゴミ箱に突っ込んだり、それを咎められて大喧嘩をしたり……。
思えばあれが、反抗期の始まりだった。
母への反抗心は、まだ、収まる気配が見えない。
最初のコメントを投稿しよう!