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わたしの父は母よりひと回りも年上で、結婚当時には既に課長職に就いていた。 けっこう稼ぎもあったらしい。 結婚の理由なんて、あの母にとってはそれで充分なんじゃないか? 父は真面目で気が弱く、優しいひとだから、母に良いように丸め込まれて、結婚させられたんじゃないだろうか? わたしがこんなふうに考えてしまうのは、母が父をないがしろにするせいだ。 夫婦仲がよかった時期なんて、あるのだろうか。 母はわたしを産んでしばらくすると、今度はクラブで働き出した。 夜、出掛けて行き、朝帰りが当たり前の毎日。 わたしが物心ついたときからそれは始まっていて、未だに続いている。 たぶんだけれど、仕事以外で、男の人と二人っきりの夜もある。 小さい頃はいつ離婚するのかとはらはらしたが、少なくとも母にはその気がないらしい。 考えてみればそうだ。 もともと、安定した生活のための結婚だもの。 たまに学校行事を見に来る母は、どこの家のお母さんよりも若くて綺麗で、子どもの頃はそれが誇らしかったけれど、思春期の訪れとともに羞恥心が芽生えた。 小学校の高学年ともなると、お願いだから目立たないで、と心の中で唱えるのが癖になっていた。 授業参観のお知らせをゴミ箱に突っ込んだり、それを咎められて大喧嘩をしたり……。 思えばあれが、反抗期の始まりだった。 母への反抗心は、まだ、収まる気配が見えない。
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