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1.
「その奇妙な店は、完全紹介制なんだよ。
それで、入ったらまず、髪の毛を1本ずつ提供させられる。
ハゲはどうしたらいいかって?
眉毛とか、すね毛とか、何かしらあるだろ。
そんなのおれの知ったことかよ。
それから1杯のコーヒーがふるまわれる。
そこそこ待たされるし、サービスってわけ。
喫茶店レベルとは言えないが、まあまあうまい。
少なくともここのよりはな。
あとは待つだけだが……残念なことに電子機器の使用は禁じられている。
店内での撮影・録画は厳禁、とあるから、それを守らせるのが目的なのかもな。
なんにせよ、スマホで時間を潰せないのは難点だ。
おれは本とか持って行かなかったから、置いてあった漫画をぱらぱらめくってみたんだけど、ラインナップは近所のラーメン屋とだいたい同じだな。
でもシミはないし、巻数も揃ってた。
で、待つこと30分。
番号札の番号が呼ばれる。
番号札? 受付の時に渡されるんだよ。
言ってなかったか?
まあ、細かいことはいいだろ。
電光掲示板があって、そこに数字が表示されるんだ。
銀行の窓口みたいにな。
そこでようやく個室に案内される。
すると、笑顔で待ち構えていたスタッフが、こんなカンジで……表彰状みたいにさ、両手で診断書を掲げて言うんだ。
『おめでとうございます!
鑑定の結果、あなたが提供された髪の毛の持ち主が、正真正銘、真実のご両親であることが証明されました』
そして、コーヒー1杯分にしてはちょいと高い代金を支払って、晴ればれとした気持ちで店を出る。
それでおしまい。
1時間足らずですべての片が付く。
な、簡単だろ?」
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