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「玲音~!ちょっと助けてぇ~!」
鼻歌気分を掻き消す、聞き覚えのある甲高い声。
声のするリビングへ向かえば、緩いパーマがかかった茶髪の先を指先でくるくると弄ばせている女性が立っていた。
…まぁ、母なんだが。
膝上のスカートから出た足をクロスさせながら、困ったようにリビングのテーブルに寄り掛かっていた。
とても三十代半ばとは思えない出で立ちである。
でもクォーターの母はそれを感じさせない綺麗な顔立ちをしている。
息子が言うのもなんだが、並んで歩いても姉弟と間違われるのではないか。
しかし、お気付きかもしれないが
兄がクレイで、オレがレオンというキラキラネーム。
そして母がミニスカの茶髪…。
そう。親は両親とも元ヤンです。なので、兄のヤンキーは親譲りであります。
この家庭でまともなのはオレ、玲音くんただ一人であります。
「ねぇ!玲音、聞いてる??」
「あ、はいはい。…で?」
「久零のヤツ、鞄の中身忘れてったのよ。玲音、届けて?」
「…はい?」
「朝さ、鞄に体操服入れるからって一旦中身出してたのよ。そしたら出したもの詰めるの忘れたみたい。バカよね?」
母の視線の先を見ると、テーブルには弁当、財布、携帯、充電器……充電器?学校で充電すんの!?
「さすがに携帯と財布は困ると思うし。ね?玲音、届けてよ!」
えぇぇぇ~~!!!???
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