1人が本棚に入れています
本棚に追加
その奇妙な店は、私の家から繋がっている。
いつからかこの午前二時に、壁に映し出された光が扉へと変わっていた。
取っ手が握れることも知っていたのだが、それを知った日は悪い夢だと早々に寝てしまった。
その後は、これを見ないために早くに寝ていたのだ。
だと言うのに、私は。夜、突如目が覚めた。
何となく起き上がったのはいいけど目を開けるのも辛い。まだ眠くてふらりと揺れる。
危ないと思って近くにあったものを引っ掴めば、この奇妙な店に入り込んでいた。
「いらっしゃいませー。」
別に髪が長いとか、そういう訳では無いのに顔の見えない店員が一人。そいつが座る椅子と、カウンター。
それしかない空間。いや、目を凝らせば壁の方に微かに光が、火の玉のような形のものが浮いている。
あ、夢だな。そう思う事にした。
「お客さん?商品を取りに来てくれないかな?」
「あ、すみません。」
反射的に返し、カウンターに向かって一歩踏み出せば、後ろの方でカチャリと音がした。おそらく扉がしまったのだろう。
「今回は初回サービスで鍵を渡しとくから。これを何処かの壁に突き刺せばまた来れるからね。」
「……はい。」
虹色の布がたなびいている様な。鍵とは思えないものを渡された。チェーンが通してあって、首にかけれるようになっている。
「お代はもう貰ったし。はい。」
お代なんて払った記憶はないが、これは夢。流されてしまえばいい。
次に貰ったのは何も入っていない小瓶。
「これは何ですか?」
「君が今一番欲しがっているものだよ。」
欲しいものなんて別に無いのに。
もし貰えるなら、そうだな。元気かな。もしくは、熟睡したい。
「さぁ、それを持って外に出てごらんよ。」
そう言われて、閉まっていた扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!