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さすがにこんなエピソードは聞いたことがなかった。
岡田くんとは緊張しすぎてあまり話もできないし、わたしの友達だってそこまで詳しくはない。
誰が話をしているのか。
岡田くんをよく知る人物なのだろうか。
それにこの雑音はなんだろう。
店の中で誰かが会話しているというよりは、電波の悪いテレビかラジオでも流れているようなかんじ。
何気なくガラス張りになった店内を見てみる。
何段にもなっている棚の上にはリアルにかたどった動物の置物や、どこかの土産物の提灯とか、呪われていそうな日本人形など、外向きには置かれているけど、ディスプレイとしてはセンスのかけらもなく無造作にぎっしりと並べてある。
引き戸の入り口付近はかろうじて人が通れる通路になっているが、人影はなかった。
ふと視線を下に向けると古ぼけたラジオが置いてあった。
これだろうか。
『続いては伝書鳩ニュースです。ちまたで話題の白オウムと、ついに、接触に成功しました!』
やっぱりこれだ。
ここから聞こえてくる。
そのラジオはノートぐらいの大きさはあった。
木製で、上部に目盛りがあり、ダイヤルで周波数を合わせるタイプのものだ。
下の方は布張りで、スピーカーになっているのだろうか。
ラジオ以外の機能はなさそうだった。
こんなにも古いラジオがまだ動いている。
それをアピールするならもっと目立つところに置いたらよさそうなものだが、下段の目立たぬところで他の骨董と供にホコリにまみれて置かれてあった。
ラジオなんてまったく聞くことがないから、どんな番組かも見当が付かない。
少しちゅうちょしたけど、わたしはしゃがんでガラス越しにスマホで写真を撮った。
商品の写真は撮らないでとは書いてないし、大丈夫でしょう。
あとで画像を見て周波数と撮影した時間を確認し、新聞の番組表を見て番組名を調べよう。
岡田くんに関する情報なら何でも知りたい。
話の内容からして、岡田くん本人がラジオ番組に投稿したのではなさそうだ。
岡田くんと親しい間柄のひとか、それともその現場を目撃していたひとか。
こんななんでもないような話を採用するのがラジオというものかわからないけど、たまたま通りかかるなんて奇跡みたいだ。
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