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その奇妙な店は、昔、駄菓子屋があったところに、いつの間にか建っていた。
駄菓子屋の店主のおじいさんが、数年前に子どものところへ引っ越してしまったので、そこは長らく空き家となっていたのだ。
日もとっぷりと暮れた頃、店の軒先に灯る様々なランタンの灯りを見て、私は初めて、その店がそこにあることに気づいた。
店先に立てかけられている看板には、薄い赤茶けた木板に黒字で、「灯り あります」と書かれ、その下に四角のはんこのようなものが押されている。屋号だろうか?
立ち止まってよく読むと、何とか「灯火堂」と読めた。日中にこの看板を見た記憶はないから、きっと夜だけ営業しているのだろう。
確かに、暗くなってからここを通るのは、久しぶりのことだった。
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