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大きさも形も異なる透明な容れ物の中で輝く、色とりどりの灯。
艶やかな赤、深みに飲み込まれそうな青、柔らかな日差しのような黄、妖しさを醸し出す紫に、心を落ち着かせてくれる橙。
光源が入ったガラスの部分が、真ん丸いものもあれば楕円や三角、四角いものもある。傘の部分の装飾や材質も多種多様。ぱっと見ただけで五種類以上はある。
そのおかげで、店は、この寂れた町に似合わず、妙に華やかだ。
「電気屋さんなのかな?」
ホームセンターの電灯コーナーとも、商店街の電気屋さんとも毛色が違う店だった。ガラスのショーウィンドウもなければ、ドアだってアンティーク調の木の扉。看板がなければ、何のお店かわからない。
でも、このランタンの灯りは綺麗だ。値札が見当たらないけれど、いくらするのだろう。
カラン、と鈴の音がして、アンティーク調の木製扉が開いた。
「お嬢さん、寒いでしょ。せっかくだから中へどうぞ」
道路に面した窓から、私が見えたのだろうか。
丸メガネをかけた、黒髪ベリーショートのお姉さんが顔を覗かせた。鼻の頭にそばかすが散っている。厚みのあるロングスカートに、巻かれたストールが季節を感じさせた。
「あ、でも、私……」
買い物をする気はなかった。このままじゃ冷やかしになってしまう。
開かれたドアの向こう側から、ふわりと暖気があふれてくる。
「中にもたくさん、あるんだよ。見ていってみない?」
そう聞いて、遠慮の言葉を飲み込んだ。今帰ったって、どうせワンルームで私を待つ人はいない。お姉さんもこう言っていることだ。それなら、ほんの少しだけ、寄り道したってかまわないよね?
「じゃあ、お邪魔します」
どこか懐かしい光で満たされたその店に、私は足を踏み入れたのだった。
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