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「するよ?」
あ、するんだ。やっぱり。
そーだよね、ヴァンパイアが貧弱な種族だったら生き残ってないよ!
「皮膚や粘膜の再生力が上がるから鼻血にはならないね。ティッシュの摩擦にも耐えられるから、鼻をかみほうだい」
「しょぼいよ!」
思わず叫んでしまう。
恩恵を受けるところがそこでいいんですか、日向君!
「一応、吸血鬼の患者に血を飲ませたら大やけどでもピチピチに肌が蘇ったり、ガンが再発しなくなったってカルテはあるんだけどさ。
細胞分裂の限界やエラーを解消しても、アレルギーは免疫関係の問題だから劇的に改善はしないんだよなあ……。
エイズになって亡くなった同族の例もあるし」
「それって不死身なの……?」
「残念ながら、インフルエンザや肺炎での死亡率は普通の人間と変わりません。血を飲めば外傷には滅法強いけどね」
日向君は肩を竦めた。瞳さんのご期待には沿えなかったかな?と、言う。
悪戯っぽい表情を向けられると複雑な気持ちになってしまう。
しょぼくはないけど……アレルギーには殆ど役立たずな能力であるのかもしれないけれど。
今の話を聞いていたら、日向君は血液を摂取し続ければ長生きできる身体をしているんだと実感してしまったわけで。
細胞が老化していかない彼氏どのは、
不老長寿どころか、細菌感染にさえやられなければ永遠にこの世に留まっていられる特別な可能性を持ってる。
「ちょっとでも楽になるんなら、血を飲めばいいじゃん。耳鼻科に悩まされることはなくなるみたいだしさ」
と、私が笑いかける。
――いつまでも細胞が老いなくなるのなら、こうして私と付き合ったことも日向君の脳から消えていくことはないのだろうか。
短命な人間のことを、彼は永遠に覚えているのだろうか。
老いていく私のことを、きっと嫌になってしまうのかな。
「そりゃまあね。それなりに効くかもしれないけど……」
彼氏どのは唇を舐めて言う。
「権利を持っているからって、それを使わないで生きる自由ってあると思わない?」
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