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私が怪訝な面持ちになったのに、日向君は笑い声を上げた。
空っぽになった彼の弁当箱にはご飯粒1つだって残ってない。胃袋へおさまった昼食に心から満足しているみたいだ。
自転車で出かけた焼肉屋でホルモンを焼いてくれたこともあるし、レトロな喫茶にあった大盛りパフェを2人でつついたこともあるけれど。
いつだって吸血鬼な彼氏さんは、美味しそうに私の手料理を食べてくれる。
「僕は、瞳さんと出会ってから一滴も血を飲んでないのさ」
「……なんで?」
意外な言葉に、自然と呟いてしまう。
今日はずっと質問してばっかだけど……、それって願掛けでもしてるみたい。
「……本当にわかんない?」
近くに座っていた彼が距離をつめてきた。
引き締まった腕が、こちらの腰にまわられる感触がして――あっという間に日向君の膝の上に乗せられてしまった。そのまんま、抱え込むように抱きしめられる。
かなり密着した体勢だ。
「……だって、不老不死になれるんでしょ?」
「僕は、なりたくないんです」
「永遠の若さだよ?」
「生涯現役はちょっと魅力だけどね」
冗談めかしたことを言われた。
彼はさりげなく眼鏡を外していた。学ランの胸ポケットにすべり込ませて、口端を上げる。
ちゅっと、頬にキスをしてきた。
「ドン引きされるかもしれないけど、僕は瞳さんと一緒に死にたい」
――それって――――、
「ヤンデレ!?」
「逃げないで、無理心中じゃないから!」
青くなった私がもがくと、日向君が一生懸命に抑えこんでくる。
なかなか筋肉が太くならないのがコンプレックスらしいけど、女の子が太刀打ちできる強さじゃない。
「きもい、鳥肌立った!」
危険な変態に身震いすると、彼はうなだれてしまう。
……はー、と息をつかれた。
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