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「だからね、僕だって血を飲まなければ自分が干からびていくのは理解してるんだよ」
半目になってる私は「じゃあ、飲めばいいじゃん」と拗ねた口ぶりになってしまった。
そっぽを向くと、冷たい指先で頬を撫でられる。吸血鬼は穏やかな表情をしていた。
「干からびて、瞳さんと一緒に歳を重ねていきたいんだ。
あなたと2人で老いて、同じ寿命で死んでいきたいと思ったから気安く飲むのを止めたんだよ。
血を口にするのは、好きな子をおいて早死にしないための最終手段にしておきたいな……と」
お馬鹿なことを考える吸血鬼だなって、真っ先に私は感じた。
不老不死の手段も権利もチャンスも転がっているのに、全部それを放棄してしまいたいだなんて始皇帝の幽霊に祟られても文句が言えないよ。
「病気で苦しむ人たちを、みんな敵に回すような生き方をしたいの?」
「我がままなのは分かってるよ」
「……ばか」
アレルギーばっか抱えて、メリットを享受できない忍耐の人生になってしまうのに。
私の寿命に合わせる為に、吸血鬼ではなく普通の人間として生きていくと宣言してくれたことに、不謹慎にも嬉しくなってしまう。
じわじわと顔が火照っていく。
恥ずかしさに目をつむってしまうと、「ひとみさん」と彼が囁いてくる。
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