33人が本棚に入れています
本棚に追加
気が付いたら、透明感のある空と覗き込んでくる端整な日向君の顔があった。
サラリとした前髪に、長い睫毛――屋上で押し倒されたのだと数秒たってから理解した。
唇を舐めた吸血鬼が、赤らんだ私の耳に問いかける。
「僕のために、毎朝もつ煮を作ってくれる?」
……そういえば、あなたはそーいう人でしたね。
口説き文句にまでそれが出てきたことに笑ってしまう。
縁をとりもたれて何だけど、もつ煮は栄養がありすぎて食べ過ぎは身体によくないとも聞いている。
血液を絶つにしても、やっぱり健康に歳をとって欲しいかなぁ。
「……味噌汁なら、いいよ」
私は、自分からキスをした。
ついばむような口づけで済まそうと思ったら、目を光らせた彼に離してもらえなかった。
長く、長く、ちょっと長すぎない?って思うぐらいに、がっつり舌を絡められて。 彼氏どのの理性が吹っ飛びそうになった時に、授業開始を予告するチャイムが鳴った。
舌打ちをした日向君の葛藤が分かったので、出席したい私は軽く睨み付ける――。
「ねえ、明日のもつ煮弁当にぶち込む唐辛子、赤いのと青いのどっちにされたい?」
これから先は以下省略。
この吸血鬼が、午空さんの旦那イヌと噂されるようになる未来を私はまだ知らない。
最初のコメントを投稿しよう!