私と日向君

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 もつ煮といっても、地域によって調理法が異なるらしいことに私、午空瞳ごくうひとみが気が付いたのは中学を過ぎた辺りだった。  B級グルメのホルモンだのとテレビでやってたって、それがどの部位のことなのかも見当がつかず。焼肉屋の食べ放題で美味しく平らげた後に、その正体を知ったくらいだ。  ……なんだ、案外旨いんじゃん。 そんな感想を抱いてネットで検索したのが、それぐらいの時期。  コンビニやスーパーでその手の、お肉をたまに母親に買ってもらうようになったのが、高校入学してすぐの頃。  次第に興味をそそられて、色々なレシピを探してはたまに作ってみるようになり……それがまた味覚に合ってしまったもんだから。 ふとレバーやヒモを思い出しては食べたくなると、もう説明書も要らずにくさみ抜きの牛乳や塩水、熱湯をスタンバイできるぐらいになった。  柔らかでジューシーな火の通り加減や、コリコリっとした歯ごたえまでこだわってフライパンを自分で熱するようになり、 玉ねぎのスライスの厚みまでマスターした夕飯が作れるようになった時には思わずガッツポーズをして。  ――なぜか最近では、そんな料理の腕が、彼氏の弁当箱にもつ煮を入れる日常に活用されるようになった。
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