私と日向君

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 現在の彼氏どの、日向君との出会いは今でも情けなくなる。 この話しの流れで薄々いやな予感はしているだろうけど、多分皆様のご察しの通り……。 けったいな彼氏との馴れ初めのきっかけは、女友達とのこんな雑談だった。 「おまじないブックに鶏の心臓食べれば美女になれるとかあるんだけど……普通にこれ、ただの焼き鳥じゃない?」 「言われてみれば、焼き鳥のハツじゃん!うっわ~マジワロス」 「まあ、オッサンっぽいけどさあ……ふつうにこれ結構美味しいよ。私、三割引きになってるの見つけたら照り煮にして食べてるもん」 「え!?ちょっと午空の肌よく見せてよ!」  ……と、いったやり取りをクラスメイトの日向君が通りすがりに聞いてしまったのが全ての発端である。 後から聞いたら。彼はその時、モツを愛する女性と出会った運命にいたく感動したらしい。  ――どんな運命だ、どんな!!  それからの日向君によるアプローチといったら酷かった。 クラス中が気の毒な眼差しで見つめてくるようになったくらいだ。 毎日しつこく、「一口でいいから手製のもつ煮を食わせてくれ!」と財布までちらつかせて私を追いかけてくるようになったのだ。  冗談のようにも思えたのだけど、熱い眼差しはどこまでもマジで。 お前はスペイン男か!と突っ込みたくなるくらいの甘いセリフを、モツを食べるためだけに恥ずかし気もなく耳元で囁いてきた。  どこまでも変態でしかなく、どこまでも彼は真剣だった。  いくら日向君がイケメンだからってこんな迫り方はされたくないわー。 と女友達は口を揃えて、日付付きの写真をスマホでとっていた。 「いつ午空が通報してもいいようにだよ」と優しい目をして微笑んでいた。  警察に駆け込む勇気ともつ煮をタッパーに詰める勇気。 どっちに軍配があがったかって、そりゃあ後者だった。……根を上げたともいう。 余りのしつこさに、1度きりだと念を押して。 レバーとキンカン玉子の照り煮を昼休みに渋々振る舞ったところ。  食べ終えた日向君に抱きしめられて、私は教室のど真ん中でべろちゅーされた。
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